第14回 意見交換交流会「公開 地域ケア会議」
開催日 平成25年 7月 31日(土) 14:00~15:30
場所 各務原市中央図書館4階 多目的ホール
テーマ 在宅医療介護における困難事例
「公開 地域ケア会議」
福祉専門職有志による模擬地域ケア会議
私たち各務原市ふるさと福祉村は、高齢者などが住み慣れた地域で生涯を安心して暮らせるよう、福祉・保健・医療などに関わる専門職を中心とするネットワークをつくり、生活支援サービスを提供することにより、地域社会における21世紀型「福祉コミュニティ」の形成を図ることを目的に平成15年度から活動しております。
これまで、意見交換交流会という名の一般市民を対象にした公開講座を定期的に開催し、毎回100人前後の参加を頂いております。今まで開催した講座内容は「病院と地域をつなぐ緩和ケア」「孤独死を通して地域に生きることを考える」「口腔ケア」「子供にどう向き合うか」など多義に渡ります。こうした講座を開催することで、広く一般市民に参加して頂き、自分たちの未来を自分たちで支えていく地域社会を形成していくことの一助になればと願い、活動しております。参加される方の多くが60代から80代の高齢者が多いのもあり、特に一般の方にわかりやすい内容を心がけております。
前々回の意見交換交流会は、勇美財団の2012年前期公募にて助成を受け、昨年12月に「在宅医療、介護支援の現場から」という企画を開催致しました。好評だったこともあり、今回は、その企画第二弾を開催することになりました。
前々回の意見交換交流会では、脳腫瘍を患い、残りの人生を入院生活より自宅で、という、本人様の希望を元に、家族や医療・介護のスタッフに支えられながら、サービスを利用し、在宅生活を送り、家族に看取られて最期を自宅で迎えた事例を、紹介しました。その後のアンケートには、
・このように、自宅で、家族が献身的に介護してくれて、家族に囲まれて最期を看取ってもらうなんて夢のようですね、現実では、なかなか難しいでしょう。
・1人暮らしなので、そもそも在宅で。とは、考えられない。
・少ない年金の中でやりくりしてこうしたサービスが本当に使えるのか知りたい。
といった、ご意見がありました。
現場で働くケアマネジャーに話を聞くと、実際には、困難事例と呼ばれる金銭的にも精神的にも苦しい方がおり、それでも、本人の「在宅で暮らしたい」という希望を叶えるために、周囲の方々が支え合って暮らしていこうとしている事例があるとのことでした。今回はこの困難事例と呼ばれるケースを題材にして、ステージ上に、各務原市内で勤務する福祉専門職の方々に登場してもらい、普段行っている地域ケア会議を観て頂き、、一般の方々に、介護保険によって利用できるサービスや、新しい施設利用のかたち(小規模多機能型居宅介護について)等を劇中の会話に盛り込んで、参加者のみなさんにも一緒に考えてもらえる様にと企画致しました。
現実の地域ケア会議では、時間をかけ、何度も話し合いを重ねていくものですが、今回は時間の都合上、会議の一場面をお見せすることになりました。
今回の事例、山田丸男さんのケースは、実際に起きた事例を元にし、個人情報保護の観点の元、設定等一部脚色しました。そして、皆さんに具体的に納得できるまで、お伝えできるように、ケア会議終了後に、質疑応答の時間を多めに取り、会場にきて頂いている、専門職の方に質問にも答えていただきました。
当日の流れ
① 会長あいさつ
② 地域ケア会議についての説明
地域包括支援センターについての説明
③ 困難事例「山田丸男さんの事例」の紹介
④ 地域ケア会議 開始
⑤ 意見交換&質疑応答
⑥ まとめ
⑦ 副会長あいさつ
当日の様子
当日は天気が良く、33℃を超える暑い日差しの中、早い方は一時間前から来場され。始まる頃には90名以上の方が参加されていました。
ステージ上には地域ケア会議の出席者が上がりました。家族代表の長男役と、丸男さんの主治医、地域包括支援センター職員、担当ケアマネジャー、小規模多機能型居宅介護の職員等が集まり、本人の希望を踏まえ、今後の生活への不安を聞き出し、そこから得られる課題を見つけ、対応するサービスを決めていく様子を、参加者に観て頂きました。事例の中には、認知症患者を持つ家族の苦労、高齢者虐待、民生委員といった地域住民の関わり方といった問題を含み、自分や家族が在宅介護を選択したときの専門職たちの具体的な支援や対応を見ることで、参加者に在宅での介護生活にはどういったサービス、利用方法があるのか紹介していきました。
地域ケア会議が進んでいく中で、丸男さんと同居する次男の暴力を無くす為には、小規模多機能型居宅介護のサービスを利用し、二人だけの時間を減らし、ヘルパーという第三者が入ることで、次男の精神的な負担を減らすことになりましたが、デイサービス、訪問ヘルパーを利用しても、家に帰ってからの夜間は二人きりになる時間であり、その時間帯の暴力からは丸男さんを守る手立てが無いという意見が出されました。
この夜間の対応に対して、ケア会議の途中でしたが、参加者にも意見を求めました。地域の方に夜、丸男さんの自宅を訪問してもらうといった意見や警察署のパトロールをお願いするといった提案が出されました。
・各務原警察署 生活安全課の方から、各交番には、警ら予防リストというものがあり、近年高齢者の方を対象とする要望が増えている。認知症患者の徘徊も増加傾向であり、保護することも多いとの発言もありました。
・民生委員の方からは、独居や高齢者夫婦の家をチェックしておりますが、民生委員は地区に1人しかいないので、なかなか全てに対応していくには無理があるということ、市内には近隣ケアといったボランティア団体があるが、このメンバーには女性が多く、夜間の見回りといった活動は難しいと思われる。との発言が続きました。
地域ケア会議を終えて
今回の地域ケア会議では、丸男さんは小規模多機能型居宅介護の利用を開始し、長男には少しずつ、丸男さんと関わり合う時間を増やして頂き、次男にはケアマネや、地域包括支援センター、また民生委員による精神的なフォローを継続していくことになりました。
こうした、家族に対して医療や福祉の関係者が支援をしていき、生活を支えていくには、やはり限界があります。地域の皆さんが日頃からつながりを大切に考え、1人悩んでいる介護者家族や、また独居のお年寄りにも声掛けをしていく事が重要と考えます。さらに今回の事例のような、認知症患者をもつ家族に対して包括的なケアの出来る環境があると良いと考えます。
ここで会場で実施したアンケートの一部を紹介します。
・ 夜間対応の具体的な方法を聞きたかった。次男の精神的ケアの具体的な方法を聞きたかった。
・ 施設の種類や名前は分かりにくいものが多い。小規模多機能型居宅介護、 どのような施設なのか、一般の人に分かるような施設の名称にしてもらいたい。
・ 暴力のある介護者への具体的な対応策は?
といった、ご意見がありました。
現状では決定的な解決方法が無いまま、今回の地域ケア会議は終了しました。医療介護の専門職員が、高齢者虐待や、認知症患者を支援することの難しさといった簡単には解決することは無い事例を抱えながら、手探りで支援方法を探していき、在宅生活を望む本人の意思を尊重しながら支えていることを知ってもらい、問題提起する場になれたかと思っております。
講演終了後、行われた質疑応答の一部を紹介します。
Q.認知症患者を持つ家族のケアとおっしゃっていたが、実際にはどういった支援をされていますか。もう少し、詳しい説明をお願いします。
A.(地域包括支援センター職員から、)認知症患者をもつご家族には、感情のステップがあるといわれております。
第一ステップでは、「まさかうちのお父さんが、、、」「あんなにしっかりしているお父さんが、、」といった、戸惑い、否定の感情が沸きます。その後、第二ステップに入ると認知症になった家族に対して、何もかも嫌になってしまったり、無視をしたり、時には暴力を振るいます。この段階にある時間が長いほど、暴力はエスカレートしていきます。私達もなるべく早い段階で介入していきます。その後、ひとまず、割り切りといって、「まあしょうがないな」といった気持ちに転換していくのですが、そういった間に、認知症の確定診断を医師にして頂き、今後の対応にも考慮させます。しかし、また第二ステップに感情が戻ることもあります。最終的には第3ステップ、受容といって、認知症という病気を理解してもらい、うまく付き合っていってもらうように、私達職員も支援していきます。全てのご家族が第3ステップにいけるように地域包括支援センターの職員も対応するよう努力していますが、全てのご家族が受容できる精神状態になるわけでは無いのが現状です。
Q.
丸男さんの貯金を次男さんが4年間で使い果たしてしまったとあるが、これも虐待では?金銭管理や成年後見制度について解説をお願いしたい。
A.
虐待行為の中には.金銭搾取といった虐待も確かにありますね。これについては、社会福祉協議会が行う、日常生活自立支援事業というものがあります。これは支援員がご本人の通帳、印鑑等を管理して、決まった金額を決まった日に持って行くといったサービスもあります。他にも、家庭裁判所に成年後見人制度の申し立てをしていくなど、ご提案をすると思います。
訪問歯科診療、口腔ケア
次に石黒 敦歯科医師から、在宅医療の継続には重要な、訪問歯科診療、口腔ケアの重要性を詳しくご説明頂きました。各務原歯科医師会が行っている「訪問歯科診療 はぴねす」ついてのご紹介もありました。
最後に、参加者の方から、地域ケア会議の具体的な活動内容が良く解かり、小規模多機能型居宅介護といった施設サービスの利用方法や具体的な費用例もあってよかった。次回も参加したいという言葉を頂きました。
私たち「各務原市ふるさと福祉村」は今後も、最期の時まで、安心して楽しく暮らせる地域社会を目指し、地域住民の相互支援と交流を目的とした、人と人との絆を大事にする社会を創ろうとする運動を進めていきます。誰かの問題ではなく、自分たちの問題として、誰かが助けるではなく自分たちに何ができるのか、「できることから始めよう」「みんなの力で」をスローガンに、これからも地域の異業種間や、福祉、医療、介護といった職種の垣根を取り払い、ネットワークを広げ、多くの方々に情報を広める市民運動を進めていきたいと思っております。
* 今回の第14回意見交換交流会は、公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団の助成を受け、開催致しました。
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